大糸線 春の女神に会う旅
お気に入りの風景ですが、写真はみどりさんからの頂きもの
いつかは自分で撮りに行きたいものです。今度の春には・・・
「ガクン」という音ともに背中に振動を感じて目が覚めた。
薄暗い中で腕時計を見ると、午前4時を過ぎたところだった。
昨日の午後9時過ぎに大阪駅を出た急行ちくま2号は、
名古屋駅を経てようやく塩尻駅にたどり着いた。

 列車はここで進行方向を変え、北上して松本駅へ向かう。
東の空が白みかけ、北アルプスの残雪がピンク色に
染まっていく様子を眺めていると、
いつの間にか遠足前夜の少年のころに戻っていた。

 しばらく走って列車は松本駅に到着する。
ピッケルを持った登山者に続いて下車した私は、
大糸線南小谷行きの普通列車に乗り込んだ。
私の指定席は進行方向に向かって左の窓側。
これからの2時間余り、たっぷりと車窓から
の眺めを楽しむために何時もそうしている。

 蝶ヶ岳、爺ヶ岳、五竜岳、白馬岳など
残雪と山肌が作り出す雪形は、
有名なものから私が適当に名付けたものまで、
数えるときりがない。


 春になると決まった場所に、残雪模様が、
人・馬・蝶などのかたちになって山肌に現れる。
昔はこの各々の「雪形」の出現時期にあわせて種蒔き
などの農作業を行い、農事暦の役目を果たしていた。
また、山の名前の由来になっているものもある。

 雪形には二種類あって、ポジ型は、まわりの雪が
解けて白く残ったもの。ネガ型は、雪が早く解けて
黒い形に見えるものとなる。

 人は住んでいる場所や育った環境によって
移りかわる季節の感じ方が違うと思う。
大阪に生まれ育ち、自然から季節を感じることの
少ない私にとって、5月の安曇野は最高のフィールドだ。
写真家の田淵行男さんは「希望をもたらす歓びの季節」と
著している。

 時間がゆっくりと流れ、たっぷりと自然を満喫できる舞台に
「春の女神」が舞っていた。

 あれから25年余り。今年も雪形があらわれ、
女神が舞っていたのだろうか。
私はPCのディスプレーに映し出された雪形をながめて
旅を楽しんだ。また、女神に会える日を願って。